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研究

「自然災害のリスクに備え、人々の生命や財産を守ること」をテーマに、構造物の耐震化や地盤の液状化対策から、
河川や海岸の治水対策まで、快適で安全に暮らせるまちづくりを実現するための様ざまな研究を実施。
さらに、「快適で暮らしやすいまちづくりを実現すること」をテーマに、自治体や地域コミュニティと連携しながら、
新交通システムの開発やまち並みに対する意識構造の調査、コンパクトシティの提案など、
持続可能な都市環境を作り出すための実践的な研究も行っています。

また、ヒートアイランドの緩和や河川生物の生息環境を護るための研究など、環境や景観などの課題にも積極的に取り組んでいます。

自然災害リスク軽減研究センター

21世紀型自然災害のリスク軽減に関するプロジェクト」(平成24年度私立大学戦略的基盤研究形成支援事業)を
推進するために平成28年度までの5年間設置された本学科の教員を中心とする研究組織です。
都市域での震災やゲリラ豪雨に伴う水害・土砂災害など、現代社会が直面する「21世紀型自然災害」のリスク軽減を図るため、
高度な防災・減災研究を推進し、多くのすぐれた研究成果を残しました。

自然災害リスク軽減研究センターウェブサイト

計画・マネジメント

設計・施工

防災・環境

AI(人工知能)を用いた自動運転車両と信号制御の協調による道路交通の最適化

担当教員 松本 幸正

最新のAI技術を用いて,自動運転車両の走行挙動とそれに対応した最適な信号制御を組み合わせることで,交通渋滞や交通事故をなくし、地球環境にもやさしい道路交通環境の実現を目指しています。ドライビングシミュレータを用いて、完全自動運転に至るまでの過程におけるドライバーへの情報提供による走行挙動の最適化や、交通流シミュレーションを用いて、自動運転車両が一般車に混入した場合の影響予測などにも取り組んでいます。

将来、どこの道路区間にどれほどの渋滞が起こるのかが予測できます。これによって、自動運転車両が混入したときの渋滞状況も予測できます。

ドライビングシミュレータを用いて、新たな情報提供システムを開発しています。これにより、交通事故や交通渋滞の削減を目指しています。

住民の移動を支え生活を豊かにする地域公共交通の計画手法

担当教員 松本 幸正

多様化する住民の移動を支え、クルマがなくても便利な生活を営むことができる地域公共交通(コミュニティバスなど)を計画する手法の開発を目指しています。そのためには、住民の移動ニーズを捉え、地域特性を十分に把握する必要があることから、フィールドに実際に出て調査を行い、時には、地域住民とワークショップを開いたりしています。これらの調査結果をGIS(地理情報システム)や統計手法を用いて分析し、地域にふさわしいコミュニティバスのあり方について研究しています。

どのバス停からどのバス停までの利用が多いかを利用実態調査で明らかにします。これらの結果をもとに、路線の見直しを進めることができます。

研究室から飛び出し、地域住民の方々にコミュニティバスについて考えてもらうワークショップを開催し、住民目線での課題を明らかにしています。

将来の世帯分布や都市構造を予測するシミュレーションモデル開発

担当教員 鈴木 温

本研究室では、持続可能な都市の計画検討に役立てるため、将来の人口分布や世帯構造変化を予測できる世帯マイクロシミュレーション(以下、HUMS)というシミュレーションモデルの開発を行っています。HUMSは、都市居住者一人一人のライフイベント(加齢、死亡、進学・就職、結婚、出生、転居等)の発生や居住地選択を実データから得られた確率を用いて計算し、将来の都市構造変化と政策の効果を分析できるツールです。

図:HUMSの基本構造を示しています。1年ごとの個人・世帯属性変化や転居世帯の新たな住宅タイプや居住地が計算できます。

HUMSで計算した世帯分布の一例。左が現在、右が10年後の世帯分布を表しています。

地理情報システム(GIS)を用いた住みやすい都市空間のデザイン

担当教員 鈴木 温

住みやすい都市空間を実現するために、駅や商業施設までの行きやすさを数値化するアクセシビリティ評価や、携帯電話の位置情報等のビッグデータを用い、交通ネットワーク整備と人口流動に関する研究を行っています。地理情報システム(GIS)と呼ばれるソフトや3Dデザインを構築できるソフト等を使いながら、コンピューター上で都市空間を構成し、行政機関等と連携しながら、老朽化した居住地の再生や交通利便性の改善に取り組んでいます。

図:携帯電話位置情報を利用した愛知県の休日14時の人口分布。

図:3D都市モデルで再現した住宅団地。団地再生に向けた居住地デザインの提案に活かしています。

都市・交通インフラが生活の質に与える影響の評価

担当教員 中村 一樹

道路、鉄道、土地利用といった都市・交通インフラは、仕事や余暇等の様々な生活活動のアクセスの機会を増やすことで、生活の質に大きく影響します。また、近年は小型モビリティや自動運転といった新しい移動手段も生まれ、その移動自体が快適で楽しいことも、生活の質に重要になると考えます。このような、インフラが生活の質に与える影響は、利用者のニーズによって決まります。そこで、国内外の都市を対象に多様な人の生活の質のニーズを把握し、多機能なインフラ活用の有効性について研究しています。

日本やアジア都市で、車利用・鉄道利用、歩行、駅前居住に関するニーズについて調査しています。

移動手段による快適性、楽しさを把握し、健康・交流等の生活の質に与える影響を分析しています。

VRを用いた歩行空間デザインの評価

担当教員 中村 一樹

歩行空間の整備は、移動・滞留環境の改善を通して街の回遊性を高め、経済的な活性化だけでなく、健康や交流といった社会的な生活の質の改善にも大きく貢献することが期待されます。また、近年発展しているVRツールは、日常生活では経験できない都市空間を疑似体験することで、新しいビジョンの検討に役立ちます。そこで、VRツールを用いて様々な歩行空間を評価することで、空間デザインを知覚する意識構造を明らかにし、歩きたくなる都市空間のデザインについて研究しています。

VRを用いて国内外の歩行空間を疑似体験し、多様な空間を評価する実験を行っています。

CGを使って様々な歩行空間デザイン要素を表現し、評価に影響する要素を特定しています。

コンクリート構造物の熱移動に関する研究

担当教員 石川 靖晃

水とセメントが水和反応することでコンクリートは硬化します。水和反応過程においては、コンクリートには温度変化による体積膨張や収縮が生じます。この体積変化はコンクリートに有害なひび割れをもたらします。そのため、コンクリート内部の熱移動を予測することは重要です。本研究では、コンクリート内部の熱移動を正確に予測するための有限要素法解析コードの開発を行い、実測結果との比較を行うことで、解析コードに組み込まれた様々な理論の適用性についての検証を日々行っています。

水和熱測定実験。型枠内にクーリングパイプを配置することでコンクリートに生じる水和熱の除去効果について調べます。

橋脚柱頭部の水和熱によるひび割れシミュレーション(赤色はひび割れ)です

練り混ぜ直後のコンクリートの強度特性に関する研究

担当教員 石川 靖晃

練り混ぜてから1~2週間以内のコンクリート(若材齢コンクリート)は水とセメントの水和反応が完了していないため、若材齢コンクリートの剛性は時間とともに大きくなります。一方で、若材齢コンクリートに荷重が作用した場合、ひび割れが生じ剛性は低下します。このように若材齢コンクリートの強度特性は、時間と荷重履歴に依存するため、その力学特性は通常の硬化コンクリートに比べ複雑です。本研究は、若材齢コンクリートの強度特性を実験と理論の両方の視点から明らかにすることを目的としています。

練り混ぜ直後のフレッシュモルタルです。モルタルとはコンクリートから砂利を除いたものです。

若材齢コンクリートの軸荷重、軸変形、および横変形を測定しています。

天然素材由来繊維材の接着・補強によるコンクリート構造物の長寿命化をめざした研究

http://civil.meijo-u.ac.jp/lab/iwak/index.html担当教員 岩下 健太郎

天然素材に由来する繊維材は、一般的に環境負荷が小さく、その中でも引張強さや硬さ、伸度において秀でたものがあり、未来を担う材料として期待されています。そのような繊維材をコンクリート構造物に接着・補強することで、構造物の長寿命化を図る技術に関して研究しています。

繊維材による補強効果を実験により検証しています。

繊維材の接着強さを実験により検証しています。

地震や豪雨に強い補強土構造物の開発研究

担当教員 小髙 猛司

鉄や高分子材料で地盤を補強する補強土構造物は、1995年の阪神大震災以降、我が国において急速に普及してきました。山間部や傾斜地に道路を建設したり土地を造成したりするためには、自然地形を人工的に改変する必要があります。安全かつ強固な人工地盤を構築するために補強土構造物は欠かせません。本研究では、地震や豪雨に強い補強土構造物を民間企業とともに開発する研究をしています。

実際の地震に対する耐震性能を評価するために実物大の補強土構造物を構築し、地震時の各種の計測しているところです。

地震時に計測したデータを用いて数値解析をすることにより、補強土構造物内で起こっている現象を解明し、合理的な耐震設計に役立てます。

延性破壊モデルの構築

担当教員 葛 漢彬

1995年1月に発生した兵庫県南部地震の被害事例より、ひずみ集中箇所から延性き裂が発生し・進展し、脆性破壊に至ることが明らかになっています。この地震時脆性破壊を予測するためには、延性き裂発生だけてなくき裂進展から破断までも予測できる解析手法(延性破壊モデル)の確立が重要視されています。本研究では様々な荷重条件の鋼材試験体を製作し、実験と解析シミュレーションを行います。実験結果と解析結果を比較し、解析手法の確立を目指し、使用している解析手法(延性破壊モデル)の妥当性を検証しています。

鋼材試験体を試験機に設置した様子です。実験では繰り返し載荷を行い、き裂の発生・進展および破断現象を観察します。

実験結果と解析結果を比較している様子です。このようなコンター図の他にも様々な観点から比較し、解析手法の妥当性を検証しています。

鋼床版箱桁橋に発生した疲労き裂の原因解明と対策方法の選定に関する研究

担当教員 葛 漢彬

高速道路において鋼床版箱桁橋はよく使用されています。近年、大型車両の増加に伴い疲労き裂が多数発見されています。この疲労き裂は、放置しておくと重大事故につながるものであるため、原因を解明する必要があります。そこで、研究対象となる区間でのモデルを汎用解析プログラムで作成し、解析によって疲労き裂の原因を調べます。さらに、局部に着目して部分モデルでの解析及び実験を行い、原因解明と対策方法の選定を行っています。

本研究で作成した鋼床版箱桁橋の解析モデルです。

研究対象となる高速道路において発見された疲労き裂の1つです。この写真は、ブラケット控え材とダイヤフラムに発見されたものです。

コンピュータシミュレーションと実験を融合したサブストラクチャー実験システムの高度化

担当教員 渡辺 孝一

有限要素法によるコンピュータシミュレーションと構造実験装置を融合したハイブリッド実験システムを研究開発。社会基盤を支えるインフラ構造物を縮小した模型に対して、静的な破壊強度の推定や、制震のための様々なデバイスの有効性を多角的に分析します。地震動を擬似的に再現することで、制震デバイスの性能を高精度に検証するシステムを構築しています。

実験用に特別設計された構造用フレームと、油圧制御装置からなる複雑な実験システムを用いて研究を行っています。

実際の構造物を縮小した模型に対して、油圧ジャッキによって変形を作用させ破壊性状を精密に観測します。

高性能な高力ボルト摩擦接合継手の開発に関する研究

担当教員 渡辺 孝一

鋼橋は工場で製作された架設ブロックと呼ばれる部品を個別に運搬し、架設する現場で一体に組み立てることで完成し、利用されます。架設ブロックどうしを接合するためには、主として高力ボルトによる摩擦接合や、溶接による接合が用いられます。本研究は、鋼橋をより軽量で合理的な架設・施工を可能とするために、高い締結力を発揮する高力ボルトと摩擦接合継手に関する研究を行っています。

高力ボルトの機械的性能を評価・分析するための引張強度試験の様子。

高力ボルトの3D解析モデルの例

河川堤防の危険度評価と強化手法の開発

担当教員 小髙 猛司

河川堤防は、洪水に耐えられる高さと幅を満足するように、大昔から徐々に作られてきた歴史的かつ長大な構造物であり、平野で暮らす人々の命と財産を守る重要な社会基盤です。その河川堤防が、近年頻発している豪雨災害によって、破堤や大きく変形するなどの被害を数多く受けています。本研究では、精密な模型実験や実際の河川堤防における現地調査によって、河川堤防が浸透によって破壊するメカニズムを解明し、合理的に危険度を評価するとともに、さらには強化する手法の開発を行っています。

河川堤防の模型を作製し、洪水時に浸透によって破堤するメカニズムを解明し、効果的な対策を検討します。

実際の河川堤防で採取した土を用いた室内試験により、堤防土の強度や変形の性能を調べて、堤防の洪水時や地震時の安定性評価に役立てます。

橋梁構造物の巨大地震時破壊挙動の数値シミュレーション

担当教員 葛 漢彬

免震支承に取付けられる鋼輪落橋防止装置の開発に関する基礎的研究です。本研究では、免震支承に取付けられる新たな落橋防止構造を考案し、基礎的な力学性能を知ることを目的としています。そのために、解析と実験から検討を行います。解析では、単調載荷による静的解析および繰り返し載荷による動的解析を行います。実験では、解析と同様に単調載荷および繰り返し載荷による実験を行います。解析と実験を比較し、検討を行います。

鋼輪落橋防止装置の設置概念図です

解析には汎用解析プログラムABAQUSを使用して、鋼輪には3次元8節点低積分ソリッド要素のC3D8Rを、滑車には解析的剛体を用いてモデル化します。

新型高機能制震ダンパーの開発研究

担当教員 葛 漢彬

大地震による既設橋梁の主構造被害を、斜材(2次部材)を、地震エネルギーを多く吸収することのできる制震ダンパーに取り換えることで、軽減させることができます。この制震ダンパーを従来のものよりも変形性能に優れ、かつ高いエネルギー吸収能力を持つ新型高機能制震ダンパーを開発するため、実物ダンパーを縮小したモデルを用いて載荷実験および数値シミュレーションから様々な影響を調査し、開発研究を行っています。

実験装置に縮小モデルを設置している様子です。この後、荷重の増減を繰り返し行い、モデルの変形性能および有用性を確認していきます。

載荷実験結果と数値シミュレーション結果の様子です。数値シミュレーションを行い、載荷実験を同程度模擬できた上で、変形性能への影響について検討していきます。

橋梁の制震化に必要な制振ブレース接合部の合理的な設計法の確立に関する研究

担当教員 渡辺 孝一

構造物のライフサイクルに渡って取り替え不要な高機能制震ダンパーを開発し、広域的な表層地盤―基礎―構造物―制震ダンパー系の複合非線形地震応答解析により既存構造物の耐震安全性を検証すると共に、効率的な制震ダンパーの設置方法に関して研究しています。特に、ダンパーと主構造の接合部は、ダンパーの性能を発揮させる上で重要となります。

ダンパーと主構造の接合部を模型供試体によって再現し、想定される地震時に作用する力や、変形に対する挙動を精密に計測します。

ダンパーの接合部は、高力ボルトや溶接を伴う立体的な構造となります。実験では意図的に破壊させることで、設計法の妥当性を検証します。

砂礫地盤の液状化判定のための相対密度に対する壁効果の検証

担当教員板橋 一雄

砂礫地盤の液状化判定の指標に相対密度がある。相対密度の計算のためには、砂礫地盤の現在の密度、ならびに最密状態・最疎状態の密度を測る必要がある。それらの測定方法はJISや地盤工学会基準で決められているが、容器や孔の大きさならびに砂礫の粒径・種類などに関して十分には考慮されていない。そこで、容器の大きさを評価できる指標(容器形状係数)を提案し、容器がある場合の規則的な斜方配列(二次元)や菱面体配列(三次元)の壁効果の表現方法を明らかにしている。また、実際の山砂、川砂、海砂ならびに種々の大きさの容器を用いて、最密・最疎充填実験を行い、密度に対する壁効果の影響の程度を明らかにしている。

壁効果を考慮した斜方配列の場合の間隙率と充填高さの関係を示す(完全斜方配列の理論値0.0931に中々ならないことが分かります)

ゲリラ豪雨に伴う都市河川の洪水観測と雨水流出抑制方策

担当教員 原田 守博

近年、大型の台風や局地的豪雨により市街地の浸水や河川の氾濫が頻発しています。都市域では、雨水は地中に浸透せず、河川に速やかに流出しています。河川の流量を知ることは水害を防ぐ上で重要ですが、流出があまりに早いため従来の方法では流量を把握できません。そこで研究室では、新たな電波式流速計と超音波水位計を用いた洪水流量の観測手法を開発しています。また、雨水の流出を抑える対策として、ポーラスコンクリート(POC)を用いた耐久性の高い透水性舗装について、実物大の降雨実験を行って流出抑制効果を検討しています。

【電波流速計の精度検証】電波流速計はドップラー効果を用いて河川の流速を測定する最新機器です。写真は愛知用水の水路を使って測定精度を検証しているところです。

【大型ポーラスコンクリート槽による雨水浸透流出実験】透水性舗装の流出抑制効果を評価するため、実物大のポーラスコンクリート(POC)槽に人工的に雨を降らせ、内部の浸透状況や水位変化、末端からの流出流量を測定しています

水辺のヒートアイランド緩和効果を活かした街づくり

担当教員 原田 守博

ヒートアイランド現象は都市域の気温が郊外に比べて島状に高くなる現象で、単に過ごしにくいだけでなく、熱中症など健康への悪影響や、冷房の強化によるCO2排出量の増加も引き起こしています。一方、都市域では市街地の拡大に伴い河川が地中に暗渠化され、ため池も埋め立てられています。研究室では、こうした都市域の河川や池沼に着目し、水面からの蒸発に伴う気化熱や水塊自身の貯熱の効果、河川を通る“風の道”の効果を定量化することによって、水域が暑熱環境の緩和に果たす役割を評価し、街づくりに活かすことをめざしています。

【名古屋市内のため池における微気象観測風景】様ざまな機器を用いて水面上の放射収支と熱収支を測定しているところです。太陽からの放射熱に対して水面での熱輸送量が分かります。

【河川水面と陸面(道路舗装面)での熱輸送量の比較】(8月の晴天日,13~15時の平均,数値の単位:W/m2)顕熱・潜熱・伝達熱の比較から、陸面が大気を温めるのに対し、水面は大気を冷やすとともに、水域は熱を貯めこむ機能が大きいことが解かります。

健全な河川物理環境の創出をめざした研究

担当教員溝口 敦子

河川内で水とともに流れる砂が関わる現象を研究対象にしています。河川に土砂が多く流れる場合とほとんど流れていない場合では、出水時に河川内にできる地形や平常時の流れの中でできる瀬や淵の状況、陸域にできる植物の生育状況が異なります。これにより河川内の生物環境にも大きく関わります。また、大雨でたくさんの水や土砂が流れるとその川のあふれやすさが河川の特徴により異なってきます。こうした土砂の流れ、地形変化にかかわる現象を対象として、基礎的な実験と実河川での計測などを実施しながら研究をしています。

大井川の様子:UAV(ドローン)を用いて撮影した画像を用いてオルソ画像を作成することで実河川における様々な情報を収集し、変動状況を解析しています。

移動床実験の様子:砂と水がなられると様々な地形が形成されます。この写真は一次元河床波の一種である反砂堆と水面波の現象に関する基礎的な実験の様子です。

河道内地形の変化に伴う河岸侵食災害発生メカズムの研究

担当教員溝口 敦子

近年、毎年のように各地で台風や局所豪雨による河川の氾濫などが報告されています。こうした河川の氾濫には様々な要因がありますが、本研究室では、河川の地形の変化が起因となる現象に着目した研究を行っています。特に、出水時の土砂と水の流れによってできる砂州地形は平水時のより良い河川環境を提供する一方で、河川内にできる深掘れの進行にかかわります。深掘れは河岸侵食の一要因となるため、砂州の発達や流下により河岸侵食が一出水で横断方向に進行すると破堤の危険性が高まります。こうした現象を追求するため、現地調査、実験、数値解析などを用いて研究を行っています。

複断面水路、混合粒径河床における砂州の形成実験:様々な粒径を組み合わせ、かつ、河岸を設けた設置した河床に、水とともに土砂を流した実験の様子です。供給された砂の粒径等による砂州地形の形成の違いと河岸侵食状況を調べています。

実河川における河岸侵食の様子:某河川で出水後の確認された河岸侵食の様子です。現在は護岸で守られていますが、破堤に至る前にどのように手当てしていくべきなのか、現象を把握したうえでの提案を目指しています。

歴史的地盤構造物の修復・保存に関わる研究

担当教員 藤井 幸泰

日干し煉瓦や版築といった“土構造物”,ならびに砂岩・安山岩・花崗岩などの“石材”を対象として、物理的特性や風化・崩壊メカニズムの解明に取り組んでいます。古典的材料を用いる真正性や、その耐久性についても検討し、修復保存に役立てる研究を目指しています。 過去にはユネスコのプロジェクトや、土木分野の学会における研究委員会等に所属し、実際の歴史的地盤構造物の記録活動などにも取り組んできました。

横須賀第一号ドライドック。日本最古の石造ドライドック(船の修理などに利用されます)であり、江戸後期から明治初期に掛けて建設されました。

タジキスタン共和国アジナ・テパ仏教遺跡。歴史的な土構造物を、新しい日干しレンガで修復しています。

地盤中の割れ目形成や風化・崩壊に関わる研究

担当教員 藤井 幸泰

トンネルや地下備蓄基地などの地下空間の適切な利用にあたり、岩盤や地盤に発達する割れ目の方向や性質を把握することは非常に重要です。現地踏査や室内試験を通して、これらを明らかにする研究をしています。さらに地盤中の風化は上記の割れ目や地表から進んでいくことが多いです。割れ目の形成ならびに風化のメカニズムを明らかにすることにより、地すべり移動体や斜面などの山地地盤の安定性に関わる研究を行っています。

加波山花崗岩中のシーティング節理、斜面に平行に発達している割れ目(節理)の様子が分かります。株式会社石原石材の石切り場にて撮影しました。

土石流を引き起こした斜面の崩壊源。広島型花崗岩の岩隗が斜面に多数残っています。広島の阿武山南麓にて撮影しました。

間欠性土石流サージの生成機構および流下波動特性に関する研究

担当教員 新井 宗之

近年、集中豪雨等による土石流災害がしばしば報告されています。土石流災害は豪雨のある日本ばかりでなくは雨量の少ない地域・場所においても発生します。この土石流の流下現象には間欠的に多数のサージ状で流下するタイプがあります。この研究ではこのような間欠的なサージ状の流下現象がどのように生成されていくのか、またその周期や流れの速さなどがどのようになるのかを理論的また実験的に明らかにすることを目的としてすすめています。また、欧州の研究者とも共同で研究を行っています。

中国雲南省における土石流サージ(写真下部手前と奥部にサージ先端部があります)

長さ56m直線水路によるサージ流下実験(京都大学防災研究所宇治川オープンラボラトリーの施設にて)